そもそも年末調整では何をするの?
従業員を雇用している事業所は、毎月、従業員の給料から源泉所得税を天引きし、預かった税金を納めています。つまり 従業員の所得税の先払いをしているのです。
源泉所得税を納めるということは、 個人事業主のように所得税を計算して、確定申告で後払いするのと正反対であることを意味します。
先払いをした従業員の源泉所得税と正確な所得税の差額を計算し、精算するのが年末調整です。「源泉所得税>正確な所得税」なら差額分を従業員へ返し、「源泉所得税<正確な所得税」なら差額分を従業員の給料から天引きします。
出典:https://www.officestation.jp/nencho/article/473/#i-4
源泉所得税と正確な所得税の差額を従業員へ返すことを「還付」といい、給料から天引きすることを「追加徴収」といいます。
年末調整の対象となる人、ならない人
通常12月に行う年末調整は、年末まで勤務している全ての従業員が対象となりますので、正社員や派遣社員(2ヶ月以上の長期雇用の場合のみ)、アルバイト、パートタイム就業者も含みます。
出典:年末調整まとめ - 苦労する年末調整の流れをわかりやすく解説 |OBC360°|【勘定奉行のOBC】
派遣社員の場合は、派遣元の企業が実施します。
ただし、以下の条件に該当する従業員は、年末調整の対象になりません。
出典:年末調整まとめ - 苦労する年末調整の流れをわかりやすく解説 |OBC360°|【勘定奉行のOBC】
・年収が2,000万円以上ある場合
・災害被害による災害減免で所得税の支払い猶予や還付をすでに受けている場合
・副業等で2ヶ所以上からの収入があり、他の給与支払者が扶養控除等(異動)申告書を提出している場合
・非居住者の場合
・日雇い労働者など、継続して雇用していない場合
なお、以下の条件に該当した場合は、年の途中で行う年末調整の対象となります。
出典:年末調整まとめ - 苦労する年末調整の流れをわかりやすく解説 |OBC360°|【勘定奉行のOBC】
・海外勤務による非居住者となった場合
・企業在籍期間中に死亡し、退職となった場合
・心身障害などを理由に退職し、再就職が見込めない場合
・12月の給与を受け取った後に退職した場合
・パートとして働いている従業員が退職し、その年に受け取る給与総額が103万円以下の場合
(※ただし、他勤務先の給与と合計して103万円以上が見込める場合は除く)
年末調整ではダメ、確定申告が必要になるケース
税金が安くなる控除の中には、年末調整での計算が認められず、確定申告が必要な項目があります。具体的な項目は次のとおりです。
1.初めての住宅ローン控除
たとえば、マイホームをローンで購入した場合、初めて住宅ローン控除を受ける場合は確定申告が必要です。2回目以降の住宅ローン控除から年末調整で計算できます。
2.医療費控除
病院代や薬代が10万円を超える場合やOTC医薬品の購入費用が1万2,000円を超える場合は医療費控除が受けられ、税金が安くなる可能性があります。しかし、確定申告でしか計算することができません。
3.寄付金控除
ふるさと納税、国や地方公共団体への寄付をすれば税金は安くなります。しかし、ふるさと納税のワンストップ特例(5か所以内の自治体へふるさと納税をした場合の特例)により自治体が自動的に計算する場合を除き、確定申告が必要です。
4.雑損控除
盗難や災害などの被害額、シロアリ駆除や除雪費用など被害を防止する費用が一定額を超えると雑損控除により税金が安くなります。しかし、これらは確定申告でしか 計算することができません。なお、費用の一定額の目安は5万円です。
年末調整と確定申告は正確な所得税を計算するという点では共通しています。
出典:https://www.officestation.jp/nencho/article/473/#i-4
しかし、自社の従業員すべてが年末調整の対象というわけではありません。自社給与がメインの収入源か否かなど、個々の事情によって異なります。
従業員は年末調整と確定申告の違いを知らない可能性があります。
出典:https://www.officestation.jp/nencho/article/473/#i-4
よって、年末調整で計算できる項目、確定申告でしか計算できない項目について従業員に知らせる工夫が大切になります。
年末調整の基礎知識
年末調整とは
会社が給与を支払うときに、従業員の給与や賞与(ボーナス)から所得税を徴収することが「源泉徴収」です。
出典:年末調整とは?しかたや控除、期限など流れにそって解説 | 人事労務 freee
本来徴収すべき所得税の一年間の総額を再計算し、源泉徴収した合計額とあらためて比較することで、「過不足金額」を調整することが「年末調整」です。仮に余分に源泉徴収をしていた場合、その差額は従業員に還付される、という仕組みです。
過不足金が発生する理由
そもそも、なぜ「過不足金額」が発生するのでしょう。
出典:年末調整とは?しかたや控除、期限など流れにそって解説 | 人事労務 freee
なぜなら、毎月徴収していた額はあくまで概算であり、12月の年末調整で初めて金額が確定するから、というのが大きな理由のひとつです。また、年末までの1年間に給与金額の変更や転職、家族構成の変更などが生じた場合や、給与・賞与からの控除以外で社会保険料や各種保険料を支払っている場合にも、過不足金が発生することがあります。
2016年以降は本格的にマイナンバー記載が必要
出典:年末調整とは?しかたや控除、期限など流れにそって解説 | 人事労務 freee
2016(平成28)年以降の年末調整からは、対象となる従業員の「マイナンバー」(個人番号)の記載が必要となる書類があります。一定の場合をのぞき、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」には、給与所得者本人、控除対象配偶者及び控除対象扶養親族等のマイナンバーを書類に記載しなければなりません。
2019年の年末調整の変更点や注意点は?
税制改正により2020年(令和2年)から年末調整が変わる
2019年の年末調整では、これまでと大きな変更はありません。ただし、2020年度から制度の変更があるため、注意しておかなければならない点があります。
2020年(令和2年)から適用になる税制改正により、所得税に関して大きな変更があります。2020年の年末に行う年末調整からは、税額等の計算や必要書類の書式が変わることになります。
出典:2020年版(令和2年)の年末調整の仕方を解説!変更点や注意点はある?
2019年までは基礎控除は一律38万円でしたが、2020年以降は基礎控除額が所得に応じて変わり、合計所得金額が2,400万円以下の人は48万円に引き上げになります。また、給与所得控除については所得区分ごとに一律10万円引き下げられます。
このほかに、所得税額調整控除の創設、各種所得控除を受けるための配偶者や扶養親族等の合計所得金額の見直しなどの変更もあります。
出典:2020年版(令和2年)の年末調整の仕方を解説!変更点や注意点はある?
今回の税制改正により、ほとんどの従業員は税額に大きな影響を受けません。しかし、年末調整で使う書類等が変更になるため、会社が行う手続きは複雑になることが予想されます。
2019年の年末調整時には新様式の扶養控除等申告書を提出
年末調整の方法が変わるのは2020年分からですが、2019年分の年末調整時に2020年分の給与所得者の扶養控除等申告書を従業員に記入させる会社は多いと思います。2020年分の扶養控除等申告書は2019年分のものと様式が変わっているため、従業員が混乱するおそれがあります。
例えば、「源泉控除対象配偶者」や「控除扶養親族」の要件が変わるため、これまで扶養親族等だった人が該当しなくなるといったケースも出てきます。
出典:2020年版(令和2年)の年末調整の仕方を解説!変更点や注意点はある?
また、2020年分の扶養控除等申告書では、「単身児童扶養者」という欄が追加されています。ここは児童扶養手当を受給しているシングルマザーやシングルファーザー(未婚の場合含む)がチェックする欄ですが、チェックを忘れると住民税の非課税措置が受けられません。
2019年分の年末調整時には、扶養控除等申告書の記入の仕方で従業員が混乱するおそれがあります。従業員へ事前に注意喚起するようにしましょう。
年末調整手順1. 申告書用紙等の準備(11月中旬頃)
国税庁のホームページから年末調整の資料をダウンロードする次の資料をダウンロードします
出典:https://www.officestation.jp/nencho/article/473/#i-4
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
年末調整に必要な源泉徴収簿、法定調書、申告書用紙等の書類は、手引き(「年末調整のしかた」)と一緒に税務署から会社宛に郵送されます。書類が届いたら内容を確認しましょう。
年末調整で配られる申告書は3枚が一般的で、会社によっては4枚配布される。一昨年までは2枚が一般的だったが、税金の仕組みが年々複雑になり、昨年から1枚追加された。3枚の申告書の長~いタイトルは以下のとおり。
出典:【図解で説明】年末調整の書き方 ~年末調整とは~ - INTERNET Watch
1.令和元年分 給与所得者の保険料控除申告書
2.令和元年分 給与所得者の配偶者控除等申告書
3.令和2年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
1の「令和元年分 給与所得者の保険料控除申告書」は、自分が加入している生命保険、介護医療保険、地震保険などの今年分(平成31年/令和元年分)の支払い額を申告して税金を減らしてもらう申告書。2の「令和元年分 給与所得者の配偶者控除等申告書」は、配偶者(旦那さんから見た奥さん、奥さんから見た旦那さん)の所得を申告して、該当すれば税金を減らしてもらう申告書。3の「令和2年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、扶養家族の状況を申告し、来年1月から毎月天引きされる所得税の額を算出するための申告書だ。
1と2は、年末調整のために必要な申告書なので早めの提出が求められる。3は、来年の1月の給与計算に必要なので、それほど急ぎではないが、慣習として年末調整と同時期に配布・申告をすることが多い。2の給与所得者の配偶者控除等申告書の裏面には「令和元年の最後に給与の支払を受ける日の前日までに、給与の支払者に提出してください」と書かれているが、全社員が12月の給料日の前日に提出したら年末調整ができないので、大手企業ほど早めの提出が求められる傾向がある。同様に、3の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の裏面には「令和2年の最初の給与の支払を受ける日の前日までに……」と書かれているが、他の申告書と一緒に提出しよう。
会社によっては、4枚配布される場合がある。4枚目として「平成31年(2019年)分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が加わるが、これは昨年の年末調整で提出したもの。この1年で結婚したとか離婚したとか、扶養家族に変化がなかったかの確認用だ。
万が一、年末調整の提出期限に間に合わないときは、1と2が優先。3は遅れても実務上は支障がないはずだ。大きな声では言えないが、提出期限を過ぎても諦めないで、感謝の念を忘れず「申し訳ありません」とお願いすれば受理される可能性は高い。
年末調整手順2.申告書用紙を従業員に配布(11月中旬~下旬頃)
申告書用紙を従業員に配布(11月中旬~下旬頃)
給与所得者の扶養控除等申告書、保険料控除申告書及び配偶者特別控除申告書を必要に応じて従業員に配布し、記入して提出するよう指示します。
申告書用紙を従業員から回収(11月下旬頃)
従業員から申告書用紙を回収し、記載内容のチェックを行います。
従業員から預かる資料は次のとおりです。
出典:https://www.officestation.jp/nencho/article/473/#i-4
・生命保険料控除証明書
・地震保険料控除証明書
・住宅ローン控除の資料である金融機関等からの借入金残高証明書と住宅借入金等特別控除額の計算明細書
・前職の源泉徴収票(中途入社をした人のみ)
・社会保険料(国民年金保険料)控除証明書(国民年金に加入している人のみ)
年末調整手順3.所得税の計算(12月上旬~中旬頃)
12月の給与が確定すると、年間の給与額や賞与額、社会保険料、源泉徴収額も確定します。確定した年間の給与等の総額をもとに正しい所得税額を計算し、差額を精算します。
年末調整の計算で基礎資料となるのが、「源泉徴収簿」です。
源泉徴収簿は、毎月支払っている給与額や賞与額、源泉徴収税額、扶養親族等の情報を従業員別に記録しておく帳簿です。
出典:年末調整まとめ - 苦労する年末調整の流れをわかりやすく解説 |OBC360°|【勘定奉行のOBC】
法令上の義務はないので、毎月の源泉徴収の記録や年末調整にも使用できるものであれば給与台帳等を代用しても差し支えありません。
※源泉徴収簿のサンプルについては、国税庁ホームページを参照ください。
年末調整の計算が終われば、従業員ごとに源泉徴収票を作成します。
源泉徴収票は、税務署への提出用、本人への交付用、市区町村へ提出する給与支払報告書(個人別明細書)で構成されています。
出典:年末調整まとめ - 苦労する年末調整の流れをわかりやすく解説 |OBC360°|【勘定奉行のOBC】
そのうち、本人への交付用の源泉徴収票は、従業員に年末調整の結果をまとめた「従業員の確定申告」の控えとも言えます。年間の所得額や控除額の合計、源泉徴収税額等がすべて掲載されますので、従業員は自分の年収も確認できます。従業員へは12月の最終給与支給時に交付します。
なお、源泉徴収票は2018年以後の様式が変更されています。
※様式については、国税庁ホームページ「給与所得の源泉徴収票(同合計表)」を参照ください。
1給与総額と徴収額の計算
対象となる従業員の、1月から12月の期間に支払われた「給与や賞与(ボーナス)の総額」と源泉徴収した「徴収税額の総額」を計算します。未払い状態でも、支払いが確定している給与については、その年の年末調整の対象となります。また、年の途中で入社した従業員については、その年に前職で給与を支払われていた場合、前職分も年末調整の対象になります。この場合は、前職の源泉徴収票を収集する必要があります。
2給与所得控除後の金額の計算
「給与所得控除」とは、従業員の所得税などを計算するときに、一定額を法律で定められた必要経費として給与から差し引くことができる控除分をさします。(1)で計算した給与や賞与(ボーナス)の総額に応じて給与所得控除額を計算し、給与や賞与(ボーナス)の総額から差し引くことで、「給与所得控除後の金額」を計算します。
詳しくは国税庁の公式サイトの「給与所得控除後の給与等の金額の表」をご覧ください。
3各種所得控除の合計額の計算
各種所得控除額を正しく計算するため、以下6つの書類を控除の証拠として収集し、「所得控除の合計額」を計算します。
扶養控除等(異動)申告書(※1)
配偶者特別控除申告書
自社の給与・賞与(ボーナス)からの社会保険料控除額の情報
従業員が加入する生命保険・地震保険などの保険料控除証明書
給与・賞与以外で支払った社会保険料の保険料控除証明書
住宅ローン控除のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書(※2)
(※1)すでに1月には回収して11月前後に従業員に配り、修正点などを確認した上で「再度回収」というのが一般的。
(※2)この段階では計算はせずに収集のみとなる。
4課税給与所得金額の計算
「課税給与所得金額」とは、納めるべき所得税を計算するためのもとの金額です。(2)から(3)を差し引き、「課税給与所得金額」を計算します。その際、1,000円未満の端数は切り捨てます。
5算出所得税額の計算
(4)で計算した「課税給与所得金額」から、国税庁の公式サイト「算出所得税額の速算表」を参考にして、「算出所得税額」を計算します。
6住宅ローン控除額の控除と年調所得額の計算
1年目の場合は年末調整の対象とならない確定申告の必要がありますが、2年目以降の住宅ローンについては年末調整での控除となります。(5)で計算した算出所得税額から、住宅ローンの控除額を差し引いたものが「年調所得税額」です。
7年調年税額の計算と過不足額の還付・徴収
(6)で算出された年調所得税額に102.1%をかけると「年調年税額」を計算できます。(1)で算出された源泉徴収税額の総額が「年調年税額」より多ければ差額を「還付」、あるいは(1)で算出された源泉徴収税額の総額が「年調年税額」より少なければ差額を「徴収」します。
8所得税徴収高計算書の作成
1月10日までの源泉徴収税の納付の際に、税務署への提出が必要となる「所得税徴収高計算書」を、(7)を反映させて作成します。
年末調整手順4.正確な所得税を計算し、還付または追加徴収をする
税務署や役所に提出する書類の作成(翌年1月)
税務署に法定調書(源泉徴収票、支払調書)を、従業員の住所地の役所に給与支払報告書を提出します。
年末調整後に行う処理として、従業員へ精算した後には以下3つの書類の作成・提出を行います。
出典:年末調整とは?しかたや控除、期限など流れにそって解説 | 人事労務 freee
源泉徴収票(給与支払報告書)を作成
「法定調書合計表」と「源泉徴収票」(※)を税務署へ提出
「給与支払報告書」を各従業員の所在地となる市区町村へ提出
源泉徴収票は、全従業員分ではなく、必要条件に当てはまる従業員のみが対象となります。
なお、会社は1月31日までに、源泉徴収票を本人に交付する必要があります。
源泉徴収税の納付期限は、法定調書の提出期限よりも早く、「所得税徴収高計算書(納付書)」を作成したら年末調整を行った翌年の1月10日までに税務署に対して提出・納付します。
出典:年末調整まとめ - 苦労する年末調整の流れをわかりやすく解説 |OBC360°|【勘定奉行のOBC】
ただし、納期の特例事業者に関しては、1月20日が納付期限となります。
年末調整に必要な書類
年末調整では、最低でもこの3つの書類を準備しておかなければいけません。
・扶養控除等(異動)申告書
・保険料控除申告書
・配偶者特別控除申告書
出典:年末調整に必要な書類をまとめて紹介|税理士検索freee
ほとんどの書類は従業員が自分で記入することになるので、事前に十分に説明をする必要があります。
扶養控除の人数の出し方などは、分かりにくい記述もあり記入ミスの多い個所です。
どこをどのように記入しなければならないのか、事前にセミナーを行ったり、チェックリストを渡しておいたりするとよいでしょう。
必ず提出が必要な書類
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
給与所得者が、その給与について、配偶者控除や扶養控除、障害者控除(特別障害者を含む)、寡婦控除、寡夫控除、勤労学生控除などの諸控除を受けるための手続きに必要な書類です。
出典:年末調整まとめ - 苦労する年末調整の流れをわかりやすく解説 |OBC360°|【勘定奉行のOBC】
扶養控除は「配偶者以外の扶養親族」が該当しますが、扶養親族がいない場合も「いない」という申告が必要になります。
またこの申告書にはマイナンバーの記載※も原則必要です。書類が提出されたら、マイナンバーの記載は適切か、扶養親族や障害者、寡婦、寡夫等の適用要件が適切か、すでに申告されている内容に異動がないかなどをチェックしましょう。申告書の様式は、国税庁ホームページ「給与所得の扶養控除等の(異動)申告」よりダウンロードが可能です。
該当者別に提出が必要な書類
● 所得控除が受けられる保険料や確定拠出年金(iDeCo)等の掛金がある人
→ 給与所得者の保険料控除申告書と控除証明書類
出典:【年末調整マニュアル】総務担当者が押さえておくべき年末調整のしかた
生命保険料や地震保険料などの保険料を支払った人が、所得から控除を受ける手続きのために必要な申告書です。申告書には「生命保険料控除」「地震保険料控除」「社会保険料控除」「小規模企業共済」といった、4つの保険料控除の記入欄が記載されています。また、確定拠出年金(iDeCo)など天引きしていない掛金がある場合も、所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。
提出の際には、申告書とともに各保険会社等からの控除証明書類も添付してもらいます。書類が提出されたら、証明書類と申告書に記載の内容が合致しているかをチェックしておきましょう。
● 配偶者控除を受けられる人
→ 給与所得者の配偶者控除等申告書
給与所得者が、本人および配偶者の所得金額に応じて本人の所得から控除を受けるための手続きに必要な書類です。配偶者控除は2018年(平成30年)に改正され、書類の様式が変更になったとともに、適用要件が以下のように変更されました。
<配偶者控除の適用要件>
・夫の合計所得金額が1,000万円を超えると配偶者控除は受けられない。
・夫の合計所得金額が900万円以下で妻の合計所得金額が38万円以下であれば配偶者控除は38万円。
・夫の合計所得金額が900万円超〜950万円以下で妻の合計所得金額が38万円以下であれば配偶者控除は26万円。
・夫の合計所得金額が950万円超〜1,000万円以下で妻の合計所得金額が38万円以下であれば配偶者控除は13万円。
また、配偶者特別控除の要件も変更されています。夫の合計所得金額に応じて3段階で控除額が算出され、妻の要件も合計所得金額が85万円まで引き上げられましたので、記入間違いや記入漏れがないか、提出された書類を入念にチェックする必要があります。なお、配偶者控除等申告書にはマイナンバーの記載※も原則必要となります。
申告書の様式は、国税庁ホームページ「給与所得の配偶者控除の申告」からダウンロードしてください。
※ マイナンバー記載なしの要件は、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の注釈を参照ください。
● 住宅ローンを利用しマイホームの取得等をした人
→ 住宅借入金等特別控除申告書
住宅ローンを利用してマイホームの取得・新築・増築を行い、適用要件を満たせば、年末時点での住宅ローンの残高に一定割合をかけた金額を一定期間各年分の所得税から控除する「住宅借入金等特別控除」が適用されます。この控除は確定申告での対応になりますが、本人が希望した場合、2年目から年末調整で対応できます。
● 転職で中途入社した人
→ 前職での「源泉徴収票」
転職者は、前職の企業退職後から1ヶ月以内に源泉徴収票を受け取ることができます。年末調整を実施する上で源泉徴収票は必要書類の1つなので、転職して中途入社した従業員には、早めに提出を呼びかけておきましょう。
提出が必要な4つの法定調書
(A) 支払調書
源泉徴収義務者(源泉徴収税を納める義務がある企業のことをいいます)が、「誰に」「どのような内容で」「いくら支払ったのか」といった詳細を記した書類です。
主な支払調書に「報酬、料金、契約及び賞金の支払調書」があります。これは、弁護士や税理士などの専門家への報酬、作家やデザイナーなどへの原稿料、広告宣伝のための料金、社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬等を支払った際に作成します。支払先が個人の場合、マイナンバーの記載が必要になりますので、支払先への確認も忘れないようにしましょう。
支払調書は、年末調整を行った翌年の1月31日を期限として、法定調書合計表とともに税務署に提出します。また、義務ではありませんが、支払調書は支払先へも送付するのが通例となっています。
※国税庁:報酬、料金、契約及び賞金の支払調書(同合計表)フォーマット
(B) 法定調書合計表
法定調書合計表とは、税務署に提出する各種法定調書を集計した表のことをいいます。従業員に渡した「給与所得の源泉徴収票」「退職所得の源泉徴収票」や「報酬、料金、契約及び賞金の支払調書」、「不動産の使用料等の支払調書」「不動産等の譲受けの対価の支払調書」「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」をとりまとめて作成します。
従業員ごとに法定調書を提出すると計算の手間が発生するので、事業主体ごとに内容を集計して提出することになっています。
法定調書合計表は、年末調整を行った翌年の1月31日までに税務署に提出する必要があります。
※国税庁:給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表フォーマット
(C) 源泉徴収票
12月に従業員へ渡した源泉徴収票と同じ内容のものを、年末調整を行った翌年の1月31日までに税務署にも提出します。
※様式については、国税庁ホームページ「給与所得の源泉徴収票(同合計表)」を参照ください。
(D) 給与支払報告書
給与支払報告書は、事業者から市区町村へ提出する書類で、これをもとに次年度の住民税額が決まります。給与支払報告書には、従業員ごとにまとめた「個人別明細書」と事業所全体の個人別明細書をまとめた「総括表」の2種類があります。給与システムで作成する場合、源泉徴収票と同時に作成できますが、手書きの場合は給与支払報告書(2枚)と源泉徴収票(2枚)が4枚複写になっている用紙などを使用すると便利です。
給与支払報告書は、年末調整のあった翌年の1月31日を期限として、従業員の居住区となる市区町村に提出します。総括表では従業員の居住区ごとに分類し作成します。
※総務省:給与支払報告書(総括表および個人別明細書)フォーマット
年末調整に関連する法定調書は書面による提出を原則としますが、当該年の前々年に提出すべき書類が1,000枚以上ある場合、電子申請※で提出することが義務化されました。
出典:年末調整まとめ - 苦労する年末調整の流れをわかりやすく解説 |OBC360°|【勘定奉行のOBC】
さらに、2018年の税制改正により、電子申請の義務化は2021年1月1日以降「提出すべき法定調書100枚以上」に引き下げられます。
電子申請はパソコンから直接送信できるので、書類を紙で用意する手間を省けるうえ提出先へ出向く時間も削減でき、申請手続きの効率化に繋がります。今年100枚以上発生しそうな場合は、今のうちに検討してくのもいいでしょう。
出典:【年末調整マニュアル】総務担当者が押さえておくべき年末調整のしかた
支払調書の提出と年末調整の結果を反映した源泉徴収税額の納付が完了すれば、年末調整は終了となります。
法改正内容もチェックしよう]
年末調整は法改正の影響を受けやすく、ほぼ毎年何らかの改正が行われていると言って過言ではありません。
出典:【年末調整マニュアル】総務担当者が押さえておくべき年末調整のしかた
その都度申告書の様式等も変更され、これまでも、マイナンバー制度の導入や配偶者控除および配偶者特別控除の改正※などで、申告書の様式や計算方法の変更が繰り返し行われてきました。法改正が実施される際には特に注意し、年末調整実施に影響はないか、しっかり確認しましょう。また、もし法改正による影響を受けた場合には、遅くとも申告書を配布する際には「どのように変更されるのか」について従業員へ告知することも重要です。
<a target="_blank" href="https://www.obc.co.jp/360/list/post38">https://www.obc.co.jp/360/list/post38</a>
年末調整のやり直し ~従業員の再申告を想定した実務と対処法~
年末調整計算後、従業員および配偶者の合計所得金額が見積った時点から変動し、配偶者控除および配偶者特別控除額が変わる場合には、配偶者控除等申告書を再提出してもらい、年末調整を再計算する必要があります。
出典:年末調整まとめ - 苦労する年末調整の流れをわかりやすく解説 |OBC360°|【勘定奉行のOBC】
一般的に、初回の年末調整計算から再計算までの猶予はあまり期間がなく、正確性と効率性が求められます。ここでは、年末調整のやりなおしを正しく効率的に行うための実務について、具体的に紹介します。やりなおすケースに直面しても慌てないよう、しっかり確認していきましょう。
合計所得金額の大半を占める給与所得は企業側で把握していますので、総務担当者は年末調整の計算が終わったら、すぐに従業員の給与所得に差が生じていないかチェックを始めましょう。
出典:年末調整まとめ - 苦労する年末調整の流れをわかりやすく解説 |OBC360°|【勘定奉行のOBC】
注意したい点としては、合計所得金額には、給与所得のほかに事業所得・雑所得・配当所得・不動産所得・退職所得が含まれますが、給与所得以外の所得は企業側では把握できないため、本人からの再申告を促す必要があります。
具体的には、申告書の提出依頼をする時点や申告書の提出期限が経過した時点で、「申告内容に変更がある者は総務担当者に連絡をする」旨を案内しておきましょう。