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巨頭オ【1話】

数年前、男はふとある村の事を思い出した。
一人で旅行した時に行った小さな旅館のある村。

心のこもったもてなしが印象的だったが、なぜか急に行きたくなった。男は連休に一人で車を走らせた。

記憶力には自信があるほうなので、道は覚えている。村に近付くと、場所を示す看板があるはずなのだが、その看板を見つけたときあれっと思った。
「この先○○km」となっていた(と思う)のが、「巨頭オ」になっていた。
変な予感と行ってみたい気持ちが交錯したが、行ってみる事にした。

車で入ってみると村は廃村になっており、建物にも草が巻きついていた。車を降りようとすると、20mくらい先の草むらから、頭がやたら大きい人間(?)が出てきた。

え?え?と思っていると、周りにもいっぱいいる!しかもキモい動きで男を追いかけてきた…。両手をピッタリと足につけ、デカイ頭を左右に振りながら。

車から降りないで良かった。恐ろしい勢いで車をバックさせ、とんでもない勢いで国道まで飛ばした。

帰って地図を見ても、数年前に言った村と、その日行った場所は間違っていなかった。だが、男はもう一度行こうとは思わない。

人体実験でも行われた廃村なのかな

出典:『場所を示す看板』 - 怖い話まとめブログ

異次元に迷い込んだパターンかな。
何の前触れもなく巻き込まれるのって嫌だなあ。

出典:『場所を示す看板』 - 怖い話まとめブログ

牛の首【本物】第二話

「牛の首」の怪談話とは、「この世の中で一番怖く、また有名な話であるが、あまりの怖さゆえに語った者と聞いた者には死が訪れるため、その話がどんなものかは誰も知らない」という話である。私も長い間は、「こんなのは嘘だ、デタラメだ、一人歩きした噂話だ」と鷹を括っていたが…。まあ、お聞きいただきたい。

明治初期、廃藩置県にともなって全国の検地と人口調査が行われた。これは地価に基づく定額金納制度と徴兵による常備軍を確立するためであった。東北地方において、廃墟となった村を調査した役人は、大木の根本に埋められた大量の人骨と牛の頭らしき動物の骨を発見した。調査台帳には、特記事項としてその数を記し、検地を終えるとそこから一番近い南村へと調査を移した。

その南村での調査を終え、村外れにある宿に泊まった役人は、この村に来る前に出くわした不可解な骨のことを夕食の席で宿の主人に尋ねた。

宿の主人は、「関係あるかどうかは分からないが…」と前置きをした上で次の話を語ったという。

天保3年より、数年にわたり大飢饉が襲った。これは俗に言われる「天保の大飢饉」である。当時の農書によれば、「倒れた馬にかぶりついて生肉を食い、行き倒れとなった死体を野犬や鳥が食いちぎる。親子兄弟においては、情けもなく食物を奪い合い、畜生道にも劣る」といった悲惨な状況であった。

天保4年の晩秋夜もふけた頃、この南村に異形の者が迷い込んできた。ふらふらと彷徨い歩くその身体は人であるが、頭部はまさしく牛のそれであった。

数人の村人が捕まえようとしたその時、松明を手にした隣村のものが十数人現れ、鬼気迫る形相にて「牛追いの祭りじゃ、他言は無用」と口々に叫びながら、その異形の者を捕らえて闇に消えていった。

翌日には、村中でその話がひそひそと囁かれたが、誰も隣村まで確認しに行く者はいなかった。その日食うものもない飢饉の有様では、それどころではなかった。翌年には秋田藩より徳政令が出され、年貢の軽減が行われた。

その折に隣村まで行った者の話によれば、すでにその村に人や家畜の気配はなかったとのことだった。それ以降、その村は「牛の村」と呼ばれたが、近づく者もおらず、今ではその名を呼ぶ者もいないという。

重苦しい雰囲気の中で宿の主人は話し終え、そそくさと後片づけのために席を立った。役人はその場での解釈は避け、役所に戻って調査台帳をまとめ終えた頃、

懇意にしていた職場の先輩に意見を求めた。先輩は天保年間の村民台帳を調べながら、自らの考えを述べた。

「大飢饉の時には、餓死した者を家族が食したという話を聞いたことがある。

しかし、その大木のあった村では遺骸だけではなく、弱った者から食らったのだろう。

そして、生き人を食らう罪悪感を少しでも減らすため、牛追いの祭りと称し、牛の頭皮を被せた者を狩ったのではないだろうか。

お前の見た人骨の数を考えると、その村に住んでいた村人の数にほぼ相当する。また牛骨も家畜の数と一致する。飢饉の悲惨さは筆舌に尽くしがたい。

村民はもちろん、親兄弟も凄まじき修羅と化し、その様はもはや人の営みとは呼べないものだっただろう。このことは誰にも語らず、その村の記録は破棄し、廃村として届けよ。また南村に咎を求めることもできまい。

人が食い合う悲惨さは繰り返されてはならないが、このことが話されるのもはばかりあることである」

この言葉を深く胸に受け止めた役人は、それ以後誰にもこの話は語らず、心の奥底へとしまい込んだ。日露戦争が激化する頃、病の床についたこの男は戦乱の世を憂い、枕元に孫たちを呼び寄せて切々とこの話を語ったという。

この孫の中の一人が私である。当時は気づかなかったが、祖父が亡くなった後にわかったことがあった。何の関係もないと思われた南村の者が、隣村の民全員を牛追いの祭りと称して狩り食らったのは真実である。そうでなければ、全員の骨を誰が埋められるものか…。

それゆえ、牛の首の話は繰り返されてはならないことだが、話されてもならないことであり、「呪い」の言葉がつくようになった。

「『牛の首』というとても恐ろしい怪談があり、これを聞いた者は恐怖のあまり身震いが止まらず、三日と経たずに死んでしまう。

怪談の作者は、多くの死者が出たことを悔い、これを供養するため仏門に入り、人に乞われても二度とこの話をすることは無く、世を去った。

この怪談を知るものはみな死んでしまい、今に伝わるのは『牛の首』と言う題名と、それが無類の恐ろしい話であった、ということのみである」というもの

出典:Wikipedia

開けてくれ【第三話】

A子とB男、C子とD男の2組のカップルが、夏休みを利用して一緒に旅行をすることにした。

B男は仕事の都合で出発が遅れそうとのことなので、A子はC子とともにD男の運転する車に乗り込み、先に目的地のホテルへと向かう。

道中、A子はC子やD男と他愛のない話をして盛り上がっていたのだが、車が山道に差し掛かった頃に急に睡魔に襲われ、深い眠りに落ちていった。

A子が目覚めると、そこはどうやらホテルの一室。知らない間に目的地に着いてしまったらしい。辺りを見まわすと深刻な表情のC子とD男が自分のことを見つめている。

D男は重々しく口を開いた。

「目が覚めたかい?実は…とても残念な知らせがあるんだ。どうか心を落ちつけて、ショックを受けないようにして欲しい。

さっき地元の病院から電話があった。B男はここに向かう途中に崖から転落して病院に運び込まれ…さっき息を引き取ったそうだ」

あまりに突然の知らせ。
A子は驚きで頭の中が真っ白になり、「嘘でしょ…」とだけ尋ねるのがやっとであった。

「私たちも嘘であって欲しいとどんなに願ったか。でも、これは事実なのよ」C子が涙ながらにA子に語った。

もう夜も遅かったため病院へは明日行くことにし、その日はみんな早めに眠りにつくことに決まる。

A子があまりに大きなショックを受けているようであったため、C子もD男も今日は一晩中A子の側にいると約束をした。

その日の夜遅く。A子が一睡もできぬままに過ごしていると、

「ズリッ、ズリッ」

廊下から何かを引きずるような音が聞こえてきた。

音はだんだんA子たちがいる部屋に近づいてくる。やがて、音が扉のすぐ前まで迫り

「ドン、ドン」

ドアを誰かがノックする音、そして聞き覚えのある声が響いてきた。

「A子、A子!頼むから返事をしてくれ」この声は…B男だ!

A子は起き上がり扉に駆け寄ろうとしたが、誰かに手を掴まれてそれを阻まれる。見ると厳しい表情のD男がしっかりとA子の手を握って離さない。

C子も不安そうな表情でA子を見つめている。二人ともA子同様、眠れぬ夜を過ごしていたのだ。

D男が強い口調でA子に言った。

「A子、行っちゃだめだ。B男はきっと君を迎えに来たんだ。もし扉を開けたら、君まで死んでしまう!」

それでも扉の方へ行こうとするA子に向かい、C子も涙ながらに訴えた。

「ダメよ、A子。行ったらもう戻れないわ。B男はもう私たちと同じ世界の人間じゃないの。」
躊躇するA子。

その時、再び強く扉が叩かれた。

「頼む、A子。お願いだ…開けてくれ。俺は、俺はおまえなしじゃダメなんだ。お願いだ、A子。お願いだ…」

A子は二人を振り払い、涙ながらにこう言った。

「ごめん。二人とも、ごめん。私もB夫なしじゃ生きていけない。B男がいない世界で生きるぐらいなら、B男と一緒に向こうの世界へ…」

A子は扉に駆け寄ると鍵を外し、力いっぱいに扉を押し開けた。

まばゆい光が部屋の中に溢れた…

「A子、お願いだ。開けてくれ。目を開けてくれ…」
B男の声がすぐ近くで響いている。

A子は目を開き辺りを見まわした。そこは病院の一室。どうやらA子は病室のベッドに寝ているらしい。

A子の目の前にはB男の顔が、涙で目を真っ赤にしたB男の顔が見える。

「A子…」
B男はそれだけをやっと口に出すと、A子をしっかりと抱きしめた。

聞くとA子たちを乗せた車はホテルへ向かう途中に崖から転落。A子はすぐに病院に運び込まれたが、一晩の間生死の境をさまよっていたらしい。

「それから…C子とD男は死んだよ。病院に運び込まれた時には、もう手遅れだった」

B男は言いにくそうにそれだけをA子に告げた。

だるまさんがころんだ【第4話】

お風呂に入って頭を洗っている時、
「だるまさんがころんだ」
と口にしてはいけない。

頭の中で考えることも絶対にいけない。

何故なら、前かがみで目を閉じて頭を洗っている姿が「だるまさんがころんだ」で遊んでいるように見えるのにあわせて、水場は霊を呼び易く、家の中でもキッチンやおふろ場などは霊があつまる格好の場となるからなのだ。

洗髪中に一度ならず、頭の中で何度か「だるまさんがころんだ」を考えてしまったあなたは気付くだろう。

青白い顔の女が、背後から肩越しにあなたの横顔を血ばしった目でじっと見つめていることに…。

さて、あなたは今からお風呂ですか?

何度も言いますが

「だるまさんがころんだ」
だけは絶対に考えてはいけませんよ。

死を恐れる男【第5話】

ある村に、死を異常に恐れる男がいた。

特に男が恐れていたのは「自分が埋葬された後に、棺の中で息を吹き返してしまうのでは?」というものであった。

その男が病気の床にあるとき、家族全員に棺の中に電話線を引き、息を吹き返したときに確実に連絡が取れるようしてほしいと遺言を残し亡くなった。

葬式の後すぐに、遺族の住む家に奇妙な電話が入った。内容は何を言っているのか聞き取れない上に、ザーザーと混線しているような音が混じっていた。

家族は「いたずら電話だろう」と思って電話を切ってしまった。

しかし、男にかわいがられていた孫だけは「さっきの電話はおじいちゃんからの電話だよ!」と言ってきかなかった。

最初は家族も子供のたわごとだろうと思っていたが、あまりに孫が譲らないので男性が死んでいることを納得させようと墓を掘り返そうということになった。

結局墓を掘り返したのは、奇妙な電話を受けた5日も後のことだった。

棺を開けた遺族達は仰天した。

棺のふたには無数の引っかき傷が残っており、男は家族全員を怨むような怒りの表情のまま息絶えていたらしい。

男の人の叫び声【第6話】

俺が大学生の時の話。

一年は大学の寮に入ってて、2年から一人暮らし始めた。建物自体は古いけど内装は綺麗だし、家賃も安かったから決めた。そのアパートに住み始めて3日目くらいだったと思う。
俺はファミレスでバイトしてて、その日は閉店までシフト入ってたから2時過ぎに終わった。
私服に着替え終わってケータイ見たら、彼女から『バイト終わったら電話ちょうだい』ってメールがきてた。
で、家帰ってから電話しようと思って足早に原チャで帰ったんだ。
そのアパートは二階建で、俺の部屋は二階の真ん中の部屋。
部屋についてすぐに彼女に電話した。

俺「終わったよー。」
彼女「おつかれさま!まだバイト先にいんの?」
俺「いや、帰ってきたよー」
彼女「じゃあ友達?」
俺「ん?どゆこと?w」
彼女「あwテレビかw」
俺「だからどゆこと?w」
彼女「いや、男の人の叫び声聞こえてるから友達かと思ったけどテレビでしょ?」

その瞬間すごい鳥肌立って心臓が止まるくらいゾワッとしたのを覚えてる。
当然部屋には俺以外誰もいないし、一人暮らし始めたばっかでテレビもまだ買ってない。

俺「いや、ちょっとまて。まじで怖いからやめて。1人だしテレビまだねえし。まじでビビらせよーとしてんならやめて」
彼女「え?ちょっとまって逆に怖い。わたしガチで言ってるんだけど。え?じゃあずっと叫んでるのだれ?」

とか言ってた瞬間、ベランダに干してあった服が全部一階に落ちたんだ。
まあ、そのときに突風でも吹いたのかもしれないけど、帰るときは風も強くなかったし、なによりタイミングが怖すぎて、家飛び出して原チャ飛ばして近くに住んでる友達の家に転がり込んでその日は泊まらせてもらった。
すっげえ怖かった。

で、次の日、不思議なもんで昨日はあんなに怖かったのに外が明るいと何であんな怖がってたんだろうくらいのテンションになってきて、家に帰ったんだ。
そう言えば落ちた服拾ってないこと思い出して、回収してきたんだ。
そっからは特に何も起きずに過ごしてた。

でも一週間後、大学から帰ってきたらアパートに警察が10人くらいいて、俺の斜め下の部屋に出たり入ったりしてた。
しかも辺り一帯なんか凄い臭くて、思わず吐きそうになるくらい。
警察に「どうしたんですか?」って聞いたら、どうやら斜め下に住んでたおっちゃんが部屋で首吊って自殺したらしい。
死後1~2ヶ月経ってたらしくて腐乱してるから、しばらくはちょっと臭いがキツくなるかも、って言われた。
マジかよ気持ちわりーなーって思ってた瞬間鳥肌が立った。

あの日ベランダから落ちた服、全部おっちゃんの部屋の前に落ちてたんだ。
もしかしたら気づいて欲しくて自分の部屋の前まで俺を来させたのかな。

誰かの髪【第七話】

数年前、私は、妹と二人で東京で二人暮らしをしていました。
元々は、二人別々に部屋を借りていたのですが、二人の家賃を合わせると一軒家が借りられるという事に気付き、都心から多少離れてはいるものの、 広くて綺麗な家を借りる事にしたのです。
ある日、妹がお風呂に入り、私が二階でテレビを見ている時です。
風呂場から「ギャアアアアア」という物凄い悲鳴が聞こえました。
ゴキブリでも出たかと思って一階に下りると、妹は髪をぐっしょりと濡らして裸のままで廊下に立っていました。

何があったか知らないが、いくらなんでもその格好はないだろうと呆れながら

「どうしたの?」

と聞くと青ざめた顔で

「・・・風呂場、見て来て、お願い」

と言います。

言われた通り見てきましたが、特に変わった様子はありませんでした。
脱衣所までびしょ濡れで、妹が湯船から慌てて飛び出した様子が伺えた以外は。

取り敢えず服を着て、髪を乾かして一息付いてから、妹は事情を話し始めました。

いつものように、お風呂に浸かっていると

「ヒュー・・ヒュー・・」

という、誰かの呼吸する音を聞いたというのです。周りを見わたしたのですが、誰もいません。
風の音だと解釈し、妹は深く気にせずに髪を洗い始めました。

湯船に浸かりながら、上半身だけ風呂釜の外に身を乗り出し、前かがみになって髪を洗います。手のひらでシャンプーを泡立て、地肌に指を滑らせ、 髪を揉むようにして洗いました。そのとき、ある事に気付いたのです。

髪が、長い。

妹が洗っている髪の毛は、彼女自身の髪よりも数十センチ長かったそうです。
そして、もう一つのある事実に気が付いた時、妹は思わず風呂場から飛び出してしまったそうです。

後頭部に、誰かの鼻が当たっている事に。

それ以降、妹は極度の怖がりになってしまい、お風呂に入る時は必ずドアの外で私が待機するようになりました。

私自身は、今日に至るまで、何ら不思議な体験をしてません。
しかし、妹は確かにあの時、自分でない誰かの髪を洗ったと言います。

ごろう【第八話】

私が大学生だった頃の話です。
ある日私は クラブのコンパで夕飯は いらないと母に言いました。
すると、そこにいた弟と妹も、その日は約束があり、家で夕飯は食べないとの事でした。
それを聞いた父と母も、「それなら私たちも 外食しよう。」と、その夜は、家族全員が外出する事になったのです。

夕方、私は 荷物を置きに、一旦家に戻りました。
その時すでに家には誰もおらず、待ち合わせの時間も迫っていたため、すぐに家を出ようとしたときです…

電話が鳴りました。


私 「はい、○○です。」
「もしもし、ボクごろう。」

…それは 明らかに4,5歳の幼児の声でした。

「いまからいくからね」

???誰だ?ごろう?こども?知らないよ…

私 「えっと~、どちら様ですか?」
「ボクごろう…いまからいくからね」
私 「え?もしもし?ボクどこのごろう君?」

「………」

その名前にも、年齢にもまったく心当たりがなかった私は間違い電話だと思いました。

私 「もしもし?ボクどこに電話してるの?ウチは…」
「かせの○○でしょ?」

確かにウチは『加勢と言う所の○○と言う苗字』です。
私は 少々あわてました。
母達の知り合いの子供なのではないか?何か約束をしていたのではないか?

「…ボクいまからいくからね」
私 「あのね、今日は みんな出掛けてて、ごろう君来ても誰もいないよ?!
私もこれから出掛けちゃうし。お父さんか、お母さんに代わってちょうだい!
…もしもし?…もしもし?!」


「ボク……いまからいくからね。」


突然、私は気味悪くなりました。

その子は幼児独特のたどたどしい、ゆっくりとしたしゃべり方で 、何度も私が来てはダメだと言っているのに、あせる感じもなく、同じ言葉を同じ調子で繰り返すのです。

自宅の電話番号は電話帳に載せていないので『加勢の○○』と言うのなら知人の子に違いないのですが…

「いまから………いくからね…」
私 「もう切るよ、出掛けるからね。来てもダメだってお父さんとお母さんにもそう言ってね。」


「おとうさんもおかあさんもねー 交 通 事 故 で 死 ん だ」


私は電話を切ると、ものすごい勢いで夕暮れの街に飛び出しました。
ぐずぐずしてると、その子が来てしまうような気がしたのです。

…私の家族は 災難を免れたんだ…

どうしてそんな事を思ったのでしょう…それは ただのいたずら電話だったかもしれないのに…
私の中の原始的感覚が、いまだにこのときの事を激しく恐怖するのです。

時にどこかで不吉な風が起こって何の関わりもない者に襲いかかってくる… 私はそんな事があるような気がしてならないのです。
あの夜、家族全員が外出したのは偶然でしょうか…。

そして、これも偶然なのかもしれませんが、この話を数人の友人にしたところ…

友 「…ちょっと!もう止めようよこの話!!やばいよ、あんた気が付いてる? さっきから急に人がいなくなっちゃったよ!周り見て!! あんなに沢山人がいたのに…今、私たちだけだよ!!」

私達は大阪のあるデパートの中の喫茶店で話をしていたのですが、ふと気がつくと、夕方であれほど混みあっていた、その辺り一帯に急に人がいなくなってしまったのです。

私は あの脳裏に焼きついた幼児の声を 早く忘れたいです…。

ジャリジャリ【第9話】

昨日の夜の話です。ちょっと怖かったので書かせて下さい。

私は1階の居間にあるソファで寝ていました。
居間は庭に面していて、ソファのすぐ後ろに庭へと出る大きな窓があります。

ふと庭で音がして目を覚ましました。
ジャリジャリと砂利石を踏む足音がしているのです。

「うおおお誰だよ怖えええ」

と思って息を殺していると、足音は窓のすぐ近くへ来てまた遠のいていき、また近付いてくる。
どうやら居間の窓近くから隣家との境を、誰かがゆっくりと繰り返し往復しているらしいのです。
一応窓の鍵は閉まっているし入ってくる気配はないので、変質者とのご対面は恐ろしいと思い、私はひたすら息を殺していました。

そのまま寝落ちするまで1時間以上、ジャリジャリという足音はずっと庭を往復をしていました。

1度起きて一応庭を確認したところ当然ながら誰もいませんでした。


ただ一つ気付いたんですが、うちの庭は全面芝生になっていて、歩いてもジャリジャリなんて音しないはずなんですよね。

結局何の足音だったのか分かりませんが、人間にせよ幽霊にせよ怖かったです…

血まみれの兵士【10話】

ある夜、ふと目覚めてしまう事がある。

もしかすると、そのまま自分の意思に関係なく脚が勝手に動いて戸口まで歩いていくことがあるかもしれない。

そしてそんな時、扉を開けるとその向こうには血まみれの兵士が立っている。

そしてその兵士は、「水をくれ」と言う。

もし善良な人間であれば、兵士から水を要求された時にも体が勝手に動き、兵士に水を飲ませる事ができるという。

そうなれば兵士は幸福を約束してくれる。

もし善良な人間でなければ、体が動かず兵士に水を飲ます事も出来ない。そうなると、兵士は呪詛の言葉をはきかけながら消えていくという。

そして、その夜から一週間以内に…。

この兵士は、この話を聞いたもののもとに、いつか必ず現れるらしい。

山間の村の謎の風習【11話】

これは私の父から聞いた話です。

父の実家は山間の小さな村で、

そこには変わった習慣があったのだそうです。

それは、毎年冬になる前あたりに行われる妙な習慣でした。

その頃になると、ある特定の1日だけ、

一切家から出られないのだそうです。

そして、家の玄関には家族の人数分のロウソクが立てられるのだそうです。

ただし、火は付けないのだそうです。

そして、村のお寺の鐘が鳴ったら一気にロウソクに火を付け、

蝋が溶けるまで家族でそれを見守るのだそうです。

ある年の冬の最初の頃、ある事件が起きました。

その決まりを破ってその日のうちに家から出てしまった人がいたのだそうです。

その人は、その年の夏に引っ越してきた人で、

あまり村に馴染めていなかったのだそうです。

その人は習慣について聞いていたはずですが、

それを無視して出かけてしまったのだそうです。

父の友人で、雑貨屋の息子だった人から、

その人がその日は閉めている店までやって来たのを聞いたそうです。

次の日、その人は村からいなくなっていたそうです。

そして、彼が住んでいた家は窓ガラスが全て割れ、

家中泥だらけになっていたそうです。

その他にも、家の周りには灰のようなものが円形に撒かれていたのだとか。
その異様な光景を、

村人たちは恐ろしいものを見るかのように怯えながら見ていたそうです。

その日もまた同じ風習が行われました。

と言っても、

その日の夜にロウソクを立てて家から出ないというものに変更されていましたが。

そして、父は2階の窓から妙な光景を見たのだそうです。

家の前の道を、青白い火の玉がユラユラ揺れながら通り過ぎていったのを。

今まで、そのような光景は見たことがなかったそうです。

そして、次の日の朝、そのことを両親に話すと、

父親(私にとって祖父にあたる人物)は急にどこかに走っていったそうです。

その次の年から、その妙な風習はなくなってしまったのだそうです。

そして、あの日にいなくなった人物は二度と村には戻らなかったそうです。

灯篭流し【第12話】

小学生の頃、よくH瀬村と言う山奥にある村に遊びに行ってました。
毎年夏になると、写真好きの父に連れられ村を訪れ、村外れにある川で泳ぐのを楽しみにしていました。

私が小学四年生の夏、いつもの様に父にくっついてH瀬村の川に泳ぎに行きました。
父は川から少し離れた所で珍しい花を見付け、シャッターチャンスを伺っていました。

その日は夏にしては風が強く、なかなか思うような写真が撮れないでいたのです。
気温も上がらなかったため、川で泳いでいた私はすっかり冷えてしまい、早々と車の中で服に着替えてしまいました。

父は相変わらず難しい顔をしてレンズを覗いています。
つまらなかった私は、川上の方へ向かって河原を歩き出しました。

蝉の声とチャラチャラと流れる川の音以外、何も聞こえません。
どれだけ歩いたでしょう。振り返ると、さっきまでいた場所がもう見えません。
少し不安になり、そろそろ戻ろうかと考え始めました。

その時、ゴロゴロという音と共に、空に暗雲が流れ込んで来たのです。
ポツリポツリと雫が落ちたかと思うと、すぐに大粒の雨が降ってきました。
慌てて近くにあった木の茂る場所へ避難しました。

早く止まないかなと不安になっていると、ふと背後でチョロチョロと水が流れる音がします。
振り返ると、少し茂みへ入った所に小川が流れていました。
そこに何やら輝くモノが流れていたんです。
興味をそそられた私は、近くに行って見てみました。
それは小さな灯籠の様な物でした。ゆっくりと川下へ流れていきます。
どこから来てるのだろう。
またも好奇心をそそられて、今度はそれを追って小川の川上へと行ってしまったのです。
しかし、木が生い茂ってる上、雨雲のせいで空は真っ暗。足下もよく見えず、何度も転びそうになりました。

10分ほど歩いた時、前方で人のざわめきが聞こえてきました。
軽く息を弾ませながら近寄ってみると、村の人達が傘を差し、手に先ほどの灯籠を持って集まっていました。

その中の一人が私に気付き、手招きをしたので行ってみると、
傘と小さな灯籠を私に手渡し、一緒に祭りに参加しようと言うのです。
そういえばお囃子の音が聞こえます。

見ると『○宮神社』と書かれた石の鳥居があり、境内には出店が出ています。
子供達が楽しげに狐の面を被ってはしゃいでました。
私も楽しくなってきて、一緒にお祭りに参加しました。

と言っても、先ほど手渡された灯籠を川に流すだけですが。
他の人と同じように灯籠を水面に置きました。
しかし……私の灯籠だけが、少し流れた後にひっくり返ったのです。
炎はジュゥと微かな音を立てて消えてしまいました。

その瞬間、あれだけ賑やかだった周りのざわめきがなくなってしまったのです。
五月蠅いテレビを消したときのような、そんな急な静寂でした。

びっくりして見わたすと、さっきまではしゃいでいた子供も、世間話をしていた老人も、楽しげに笑っていた夫婦も、みな寂しげな顔をして私を見ているのです。
近くにいた老婆が無言で私の手を取り、その場から離れてしまいました。
手を引かれるままに私は歩き続けました。
どこまで行くのかな、そう思って顔を上げたとき、目の前には私が泳いでいたあの川があったのです。
どうやら、ジグザグに歩いてるうちに戻ってきたようです。
フッと気が付くと、私の手を引いていた老婆の姿はありませんでした。
さすがに怖くなってしまい、河原を走って逃げるようにその場から去りました

そんなに行かないうちに、父の車が見えてきました。
車の側では父が私を捜しています。

「お父さん!」

私の声を聞きホッとしたように父が手を振りました。
と思ったら、ギョッとした顔で指をさし尋ねるのです。

「その手に持ってるのは?」

それは先ほど祭りの村人に手渡された傘だったのですが、既に傘としての役目を果たせないほどに破れまくり骨がみえていたのです。

父に今まであった出来事を伝えると、首をひねりながらこう言いました。

「雨なんて一度も降らなかったぞ?それに、その辺りで祭りなんてないと思う。あそこは随分と木が生い茂っていて、そんな人が大勢集まれるような場所ないと思うけどなぁ」

そんなはずはないと私は必死で抗議します。

仕方ないなという感じで、父はある民家に連れて行ってくれました。

そこは父が○瀬村を訪れた際、よく世間話をしたりお茶をご馳走になったりして親しくしている方の家でした。
そこに行き、私が言ったお祭りが本当にあるのか聞こうと言うのです。

家にいた中年の女性は、私達を客間に通し麦茶を出してくれました。
父が祭の事を聞くと、ハハァと呟き話してくれました。

「珍しい事もあるもんですね。それは多分×××ですねぇ。お盆近くになるとね、亡くなった方の霊が、○宮神社に集まり祭りをするという伝説があるんです。小学生の頃、私の友達のちぃちゃんと言う子も、その祭りに迷い込んだって言うんですよ。

そこで灯籠を手渡されて、川に流したら沈んでしまったと。沈むと言うことは、その人がまだ生きてると言う印なんですよ。それで、仲間だと思ってた周りの幽霊達ががっかりしちゃうんですって」

聞けば聞く程、そのちぃちゃんの体験は私と同じだった。
迷い込む前に雨が降り出した事、小川を辿って神社に着いた事、村人に手を引かれて戻ってきたこと……

「小川はないけど、私のひいひいおじいさんの代くらいまでは、確かに○宮神社はあそこにあったらしいのよ。でも元々小さな神社だったし、周りはあの通り生い茂ってるでしょう。そのうち誰も参拝しなくなったんですって。今もあるのかは分からないけど」

私はやっと背筋に冷たいものを感じ始めた。

あそこで賑やかに祭りに参加していた人たちは、皆この世の物ではなかったんです。
私の手を引き、こちらの世界まで誘ってくれたあの老婆もまた……
チリリン……と風鈴が涼しげな音を奏でた。

ボンヤリと風鈴のある隣の部屋に目を向け、思わず叫んだ。
そこには仏壇があり、遺影の人物は、私をこちらの世界まで連れてきてくれた老婆にそっくりだったのです。

「あれ、トメさん亡くなったんですか?」

父も驚いて仏壇に目をやった。

「えぇ。もう半年以上前です。88歳、天寿を全うしたでしょう」

線香を上げる父の隣に座り、私は遺影を眺めた。
似てると思ったけど、少し違うような気もする。

でもはっきり顔を見たわけじゃないし、断定は出来ない。あやふやだった。
それどころか、祭りの記憶も何だか朧気で、必死で思い出そうとしても記憶の画面に靄がかかってしまう。
ただ、あのお囃子の音だけはしっかりと耳に残っていた。

あれから何年も経ちました。
あの一件があって以来、私が○瀬村に行ったのは二回だけです。

何とか神社を見付けようと思ったんですけど、正確な位置を覚えてませんでした。
村の人も、詳しく知ってる人はいませんでした。

もう一度行きたいと思ってるのですが、残念ながら○瀬村は平成△△年ダムに沈んでしまったのです。

あの村の風景を見るのは、もう父の写真でしかないのですね。

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