1.クルー全員が電球の故障に気を取られて墜落 (イースタン航空401便墜落事故 乗員乗客176人中103人死亡)
事故機のイースタン航空 ロッキード L-1011-1(N310EA)
1972年12月、NYからマイアミへ向かう旅客機が着陸予定地周辺の沼地に墜落。
最新鋭のジャンボジェット機による初の墜落事故として注目を集めたほか、
機体に目立った故障が見られなかったため、原因究明は困難と思われた。
しかし、音声記録や飛行記録を解析したところ、信じられない事故原因が発覚。
コックピットにいたクルー4人は操縦席についている電球1個が点灯しないという
些細な問題に直面し、自動操縦に切り替え、数分間、この修理作業に没頭した。
しかし電球をいじる作業の中で機長が操縦桿を肘で押してしまい、自動操縦を解除。
わずか数分で高度が一気に下がり、警告音も鳴ったが、クルー4人は作業に
集中していて誰も気付かなかった。異変に気付いたときには墜落数秒前だった
2.軍人あがりの機長にクルーが萎縮して墜落 (大韓航空8509便墜落事故 乗員4人全員死亡)
事故機の大韓航空ボーイング747(HL7451)
1999年12月、ロンドンからミラノへ向かう韓国輸送機が英国国内の森林に墜落。
計器の故障が事故の発端だったが、音声記録を調べたところ、機長がクルーに
高圧的態度で接し、警報音が鳴っても一切対応しなかったという問題行為が発覚。
大韓航空は韓国軍のOBをパイロットとして採用する慣習があり、事故機機長も
元空軍大佐だった。しかし、軍人としての経歴は輝かしいものの、採用前は
戦闘機の操縦経験しかなく民間機・大型機の操縦経験はまったく無かった。
結果、コックピット内は元軍人のワンマン機長が指揮し、周囲のクルーを厳しい
上下関係で従える状態になっていた。機長は機体の異常に気付かず操作ミスを犯し、
警報を無視し、クルーの進言も無視。クルーは萎縮して何も行動を起こせず墜落した。
韓国人クルーが機長を敬いすぎて墜落した例は他にもある(大韓航空801便など)
3.解雇された腹いせに上司を機内で射殺、操縦士も撃って墜落
(パシフィック・サウスウエスト航空1771便墜落事故 乗員乗客43人全員死亡)
事故機のパシフィック・サウスウエスト航空 Bae 146-200A(N350PS)
1987年12月、LAからサンフランシスコへ向かう旅客機が郊外に墜落。
飛行中、管制塔との交信のなかで機内から銃声がしたという緊急報告が
なされたが、その後クルーからの応答はなく、その直後に急降下していた。
機体は音速を超えるスピードでほぼ垂直に地面へ突っ込み、衝突時は5000Gもの
大きな衝撃がかかった。墜落現場には破片となった残骸が散らばり、遺体は
足首程度の小さな肉片しか見つからず、身元の特定すら出来なかった。
調査の結果、客室で2発の銃声→乗務員がコックピットの扉を開けて緊急報告→
操縦席付近で3発の銃声→約1分後に墜落、という当時の状況が明らかになった。
機内に銃を持ち込んだと思われる男は航空会社を解雇された元従業員であり、
彼の上司だった男性の座席には2発の弾痕が残っていた。使われたのは.44マグナム。
(男がエチケット袋に書いた殺害をほのめかす文書が墜落現場から見つかっている)
4.機長が子どもに操縦桿を握らせて墜落 (アエロフロート航空593便墜落事故 乗員乗客75人全員死亡)
事故機のアエロフロート航空 エアバスA310-304(F-OGQS)
1994年3月、モスクワから香港へ向かうロシアの旅客機がシベリアに墜落。
音声記録を調べたところ、機長が幼い息子と娘を機長席に座らせ、
あろうことか操縦桿まで握らせていたことが判明。
自動操縦装置が作動しているので問題ない、という機長の親バカ行為だったが
操縦桿を握った息子が無自覚のまま機体の隠しコマンドを入力してしまい
自動操縦の一部が解除。異常状態が続いたためついにはすべてが解除された。
(なお、この隠しコマンドの存在を機長や乗員はまったく知らなかった)
機体は急加速し強いGが発生。乗員は身動きがとれなくなってしまい、
息子だけが操縦桿を握っているという恐ろしい事態に発展。最終的には
機長が息子をどけて操縦席に戻り、回復を試みたが山中に激突。全員死亡した。
5.管制官と機械がチグハグな指示を出して2機が空中衝突
(ユーバーリンゲン空中衝突事故 乗員乗客合計71人全員死亡)
2002年7月、ドイツ南部の上空でロシア→スペインへ向かう旅客機Aと
バーレーン→ベルギーへ向かう貨物機Bが空中衝突(以下A・Bで表記)。
Aの真横からBが突っ込み、Bの尾翼がAの機体を分断。Aは真っ二つになって
空中分解し、Bは尾翼を失ったため2分間飛行したのち墜落した。
夜間のため2機は互いを視認することが出来ない状況で、近い高度を飛びながら
衝突コースを進んでいた。衝突50秒前になって両機の衝突防止装置が作動し
Aに「上昇しろ」Bに「降下しろ」との警告を出したが、同じく危険に気付いた
管制官がAに「降下しろ」との指示を出した。Aは管制官の指示に従い、
Bは機械の指示に従って両方とも同じ高度に向かって降下したため衝突。
2機を正しく誘導しなければならなかった管制官はこのとき管轄空域の管制を
1人だけで行うワンオペ状態だったため、管制側の体制も問題視された。
この管制官は事故で妻と子どもを失った遺族の男性に自宅前で刺殺された。
第1機体 バシキール航空 Tu-154M(RA-85816)
第2機体 DHL ボーイング757-23APF(A9C-DHL)
6.パイロットが大統領に精神的圧力をかけられ墜落 (ポーランド空軍Tu-154墜落事故 乗員乗客96人全員死亡)
事故機のポーランド空軍 ツポレフTu-154M(90A837)
2010年4月、式典へ向かうポーランドの大統領専用機がロシア国内で墜落。
大統領夫妻、国務長官、軍司令官ら搭乗していた政府要人全員が死亡した。
着陸予定地手前でひっくり返って墜落したため遺体はすべてバラバラ状態だった。
ロシアによる意図的な撃墜・暗殺説が囁かれたが、濃霧の発生、計器設定のミス、
クルーの着陸強行など多くの要因が重なった事故と判明。陰謀の可能性は消えた。
しかし、事故直前のコックピットになぜか司令官らが出入りしていたことがわかり
ポーランド政府によるパイロットへのパワハラ疑惑が浮上。過去には安全を優先し
命令に背いた別の専用機機長を大統領が更迭したこともあった(事故機機長は当時、
副操縦士としてこれに同乗していた)。このような精神的圧力がクルーのミスを
誘発したと一部で囁かれている(ポーランド政府はロシア管制のミスを主張している)
7.セクハラ副操縦士が乗務を禁止された腹いせに心中 (エジプト航空990便墜落事故 乗客乗員217人全員死亡)
事故機のエジプト航空 ボーイング767-300ER(SU-GAP)
1999年10月、NYからカイロへ向かうエジプトの旅客機が大西洋上に墜落。
残された飛行記録・音声記録によると、機長がトイレで操縦席を離れた直後、
残った副操縦士が意味不明な言葉を唱えながら機体を急降下させていた。
この副操縦士は定年間際のベテランだったが、一度も機長になれていなかった。
また、滞在先のホテルで女性清掃員にセクハラする、宿泊客に下半身を見せるなど
素行に問題が見られ、事故前夜には機長から今後の乗務禁止を言い渡されていた。
アメリカの事故調査委員会はこの副操縦士が故意に墜落させたと結論づけたが
エジプト政府はこれを頑なに認めず、機体の故障が原因だと主張し続けている。
また、エジプト航空がこの事故について社員に箝口令を敷いたとの証言も出ている。
2015年3月に発生したドイツ機の事故(150人死亡)など、自殺と思われる墜落は多い。
8.燃料が残り少ないことを機長がド忘れして墜落
(ユナイテッド航空173便燃料切れ墜落事故 乗客乗員189人中10人死亡)
事故機のユナイテッド航空 マクドネル・ダグラスDC-8-61(N8082U)
1978年12月、NYからオレゴン州へ向かう旅客機が着陸直前に燃料切れを起こした。
住宅街への不時着を余儀なくされたが、運良く地上の人間を巻き込まず着陸。
燃料が空で火災が発生しなかったため死者は最小限で済み、機長も生存した。
事故機は飛行中に車輪を降ろしたところ、車輪が固定されたか確認できない
トラブルが発生。この問題への対処で頭がいっぱいになった機長は確認に次ぐ確認、
あらゆるケースに備えた準備を重ねて1時間近くも着陸地点周辺を飛び続けていた。
結果、燃料を使い切ってしまい墜落。残りの燃料が少ないことをクルーが
何度も機長に進言していたが、機長は車輪のことばかり気にかけ事態の緊急性を
全く認識していなかった(進言した航空機関士は墜落で死亡。なお、車輪の件は
実は大したトラブルではなく、おまけに正常に固定されていたと推測されている)
9.副操縦士が操縦桿をずっと引き続けて墜落 (エールフランス447便墜落事故 乗客乗員228人全員死亡)
事故機のエールフランス エアバスA330-200(F-GZCP)
2009年6月、ブラジルからパリへ向かう旅客機が大西洋上に墜落。音声記録を
調べてみると、機械的トラブルで機体が失速し始めた際に、若い副操縦士の1人が
「墜落を回避するため操縦桿を引く」という初歩的すぎるミスを犯していた。
機体が失速し始めている場合、パイロットは通常、操縦桿を押して機首を下げ、
機体を自然に加速させるよう訓練を受けている(これは訓練の初歩の初歩である)。
操縦桿を引いて機首を上げると、一気に失速し機体はそのまま落下してしまう。
この副操縦士は急速度で落下する機体の操縦桿をなぜかひたすら引き続け
海面衝突数秒前には「ずっと操縦桿を引いてるのに落ちてる!なんで!?」という
迷言を残した。ベテランだった機長はこのとき仮眠を取っており、対応が遅れた。
失速時に同様の対処ミスをして墜落した例は他にもある(コルガン・エア3407便など)
10.クルーが英語を聞き取れず空中衝突・墜落 (ニューデリー空中衝突事故 乗客乗員合計349人全員死亡)
1996年11月、ニューデリーの空港そばの上空でサウジアラビアの旅客機と
カザフスタンの旅客機が空中衝突。前者は空港を離陸した直後で、後者は
着陸しようとしていた。両機に乗っていた乗客乗員全員が死亡。
事故原因はすべてカザフスタン側の旅客機にあり、コックピットにいた
機長・副操縦士・通信士のうち通信士しか英語を理解できない状況だった。
さらにこの通信士が管制からの指示をきちんと機長らに伝えていなかった。
離発着する航空路の分離やレーダーシステムの近代化など他にも改善点が
指摘された事故だが、この事故のようにクルーが英語を聞き取れない、
またはちょっとした言葉のあやが原因で事故に繋がったケースは多い。
第1機体 サウジアラビア航空 ボーイング747-100B(HZ-AIH)
第2機体 カザフスタン航空 イリューシンIl-76(UN-76435)