再犯率の増加が止まらない
一般刑法犯により検挙されたもののうち、再犯者の人員及び再犯者率は46.7%(平成25年)
出典:平成26年犯罪白書
満期釈放者は、仮釈放者よりも累積再入率は相当高い。平成16年の出所受刑者について見ると、10年以内の累積再入率は、満期釈放者では60.8%、仮釈放者では39.2%であるが、そのうち、5年以内に再入所したものは、それぞれ、10年以内に再入所した者の約9割、約8割を占めている。
出典:平成26年犯罪白書
覚せい剤取締法違反及び窃盗は、他の罪名に比べ、満期釈放者・仮釈放者供に、年以内の累積再入率が顕著に高い。
出典:平成26年犯罪白書
高齢者の再犯率の増加が止まらない。
累積再入率は、29歳以下の年齢層が最も低く、年齢層が上がるにつれて高くなる傾向にある。
出典:平成26年犯罪白書
高齢者の検挙人員は、他の年齢層と異なり、増加傾向が著しく、平成25年は、6年の検挙人員の約4倍であり、成人の他の年齢層と比較して最も多かった。
出典:平成26年犯罪白書
一般刑法犯全体と比べて、高齢者では窃盗の割合が高いが、特に女子では、約9割が窃盗であり、しかも万引きによる者の割合が約8割と際だって高い。
出典:平成26年犯罪白書
高齢者の一般刑法犯検挙人員の大半を占める窃盗の増加が著しく、平成25年は6年の約4.5倍であった。さらに粗暴犯である傷害及び暴行も著しく増加しており、重大事犯である殺人及び強盗も増加傾向にある。
出典:平成26年犯罪白書
出所しても生活できないため犯罪を犯して刑務所に戻る。
高齢者の仮釈放者は増加傾向にあるが、高齢者の仮釈放率は、出所受刑者全体の仮釈放率と比べて常に低い。これは、高齢者では、引受人が以内など、釈放後の帰住先が確保できない者が多いことなどによると考えられる。
出典:平成26年犯罪白書
再犯原因はもちろん貧困であり、餓死するよりはム所に戻った方が良い、となっているのだ。
刑務所の現場では「追い出されたり、食べるものがなかったりという心配がない」という声が聞かれた。社会に居場所がない高齢受刑者にとって、刑務所は最後のよりどころになっていると感じた。
高齢者達が孤独と貧困に蝕まれて最後に命のよすがと頼りにするのが現状では刑務所しかないというのが、世界に冠たる経済大国・日本の戦慄すべき実態なのだ。
累犯の高齢受刑者には、社会に居場所がないため電車にひたすら乗り続ける無賃乗車や無銭飲食で捕まり、出所から一週間もたたずに戻ってくるパターンが多い。
なぜ刑務所に戻りたいのか
しかし刑務所の高齢者等の受け入れ体制は万全でない。
しかしいうまでもなくム所は福祉施設ではない。高齢者の面倒を見ているのは何の資格も持たない用務者が殆どで(私自身もそうだ)、そもそも介護の専門知識を持った刑務官も医者もいない。誰かが世話しなければ日々の生活も滞るから仕方なく応急処置的なことをやっているだけに過ぎず、治療や心理的なケアが出来るわけではない。一旦倒れてしまえば手遅れで死に至る場合もある。
そもそもム所が「福祉施設」に例えられること自体が異常なのだ。脆弱な福祉体制から漏れてしまった者たちが生きるために犯罪を犯してム所に入り、出所しても引き取り手が無く金がなければやはり福祉は助けてくれないから再びム所に戻り、そこで死んでいくのだ。
長い年月を生きてきて最後の場所が刑務所だったのでは、あまりに虚しいではないか。
ほかに行くところがないのだから、仮出所率は下がる。厳罰化の流れで無期刑の終身刑化が進み、刑務所はさらに福祉施設化するだろう。だが、外に受け皿がない現状ではやむを得ないのかもしれない。
「高齢で病気のある受刑者をみる刑務官は五-十倍大変」と言われている。これまで職員増員などの問題は(経費の面から)財務省の理解が得られずタブー視されてきたこともあり、対策は進んでいない。
社会全体が無駄を嫌い、「迷惑な人は出て行ってほしい」と願っている。生活に困る高齢者が罪を犯すという問題が根底にあり、高齢受刑者の増加は格差社会が直撃していると言えるだろう。