◆「完全な『パクリ』レポートを作成せよ」大坂市立大学のレポートが話題に
「完全な『パクリ』レポートとして作成せよ」「自分で独自に執筆した文章を一字一句たりとも交えてはならない」――大阪市立大学文学部で示されたレポート課題が話題を集めている。
出典:「完全な『パクリ』レポート」を作成せよ──大阪市大の課題、その狙い 常識や先入観を逆手に - ITmedia NEWS
大阪市立大学
◆文学部「表現文化論特論」レポート課題だった。
レポートの連絡があった実際のHP
<a target="_blank" href="http://homepage3.nifty.com/MASUDA/ocu/report14.html">http://homepage3.nifty.com/MASUDA/ocu/report14.html</a>
話題になったのは、「授業関係の連絡」として学生向けに掲載された「表現文化論特論」の期末課題。2月10日に増田准教授が自身のTwitterで紹介し、現在までに700リツイートを集めている。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000050-zdn_n-sci
◆レポートのタイトルは?
【「表現文化論特論」「表現文化特論I」(後期水曜日3限)】
・「表現文化論特論」「表現文化特論I」レポート課題
文化的生産物の「オリジナリティ」と「模倣」、およびそれを統御する制作主体との関係について新たな角度からの視点を獲得するために、文章テキストの作成過程に特殊な制約を設けた下記の課題を受講生に課することとする。以下の二つのテーマの両方について、レポートを作成し提出せよ。
テーマ1:「佐村河内事件に思う」という題名を付し、この題名に即した内容のレポートを作成せよ。その際、下記の執筆条件に厳密に従いつつ行うこと。(2000字程度とするが分量超過は構わない)
出典:http://homepage3.nifty.com/MASUDA/ocu/report14.html
テーマ2:テーマ1のレポートを作成した過程を振り返って、自由に感想を述べよ。(1000字以上で分量自由)
佐村河内事件とは?
佐村河内氏が中途失聴とされる聴覚障害がありながら『鬼武者』のゲーム音楽や「交響曲第1番」などを作曲したとして脚光を浴びたが、2014年2月5日、自作としていた曲がゴーストライターの代作によるものと発覚した。
佐村河内守氏のゴーストライターを務めていた作曲家の新垣隆氏
聴覚障害の程度についても疑義を持たれており、ゴーストライターを務めた作曲家の新垣隆は、「佐村河内は18年間全ろうであると嘘をつき続けていた」と『週刊文春』に掲載された独占手記で主張した。
◆テーマ1の作成条件がユニークだった。
テーマ1の執筆条件:(以下の条件を満たさないと判断したレポートには単位を認定しないので留意のこと)
・完全な「パクリ」レポートとして作成せよ。
書物、新聞記事、インターネット上などに存在する任意の既存の文章を探し、組み合わせ、テーマ1の内容を過不足なく満たしたレポートを完成させること。その際、自分で独自に執筆した文章を一字一句たりとも交えてはならない。
・書物や新聞記事、インターネット上から、異なる出典を10カ所以上組み合わせること。
出典が10カ所未満のレポートには単位を認めない。
・出典情報を厳密に記すこと
レポート内の文章のうちどこからどこまでが、どこからの出典であるかについて、レポートを読む者に一目瞭然のものとして理解でき、出典との相違がないか再検証できるように作成すること(その目的のために、どのような書式を用いたらよいかについては各自で調査・考案・工夫すること)。
出典情報や出典の箇所が、不詳あるいは不明確なレポートには単位を認定しないので注意すること(この点については特に厳しく査定する)。
・出典から採られたオリジナルの文章を一字一句たりとも変更しないこと。
句点や読点、誤字脱字に至るまで出典元と「まったく同じ」語の並びをレポートに用いること。
当然のことながら、論旨や文章が支離滅裂なレポートには単位を認定しないので、上記の執筆条件に厳密に従った上でレポートの日本語文章としての全体的な完成度を高めるよう留意すること。
◆課題を課したのは同大大学院文学研究科の増田聡准教授
増田聡准教授
増田 聡(ますだ さとし、1971年4月5日 - )は、日本の美学者、大阪市立大学准教授。専門は音楽美学、ポピュラー音楽研究、メディア論。
北九州市に生まれ、福岡県立小倉高等学校から大阪大学文学部に進む。鳴門教育大学学校教育学部芸術系(音楽)教育講座助手を経て、2008年に大阪市立大学大学院文学研究科アジア都市文化学専攻・文学部 准教授となった。
専門は音楽美学、ポピュラー音楽研究、メディア論。
◆このレポートのユニークさと難解さがネットで話題となった。
ネットでは「面白い」「読んでみたい」「出典を明らかにしながら組み合わせるのは勉強になりそう」「普通に書くより難易度高いのでは」という意見がある一方で「何の意味があるのかよく分からない」「自分で考えないで書くのってレポートって言えるの?」など疑問の声も上がり、賛否両論だ。
出典:「完全な『パクリ』レポート」を作成せよ──大阪市大の課題、その狙い 常識や先入観を逆手に - ITmedia NEWS
「完全な『パクリ』レポート」を作成せよ──大阪市大の課題、その狙い 常識や先入観を逆手に - ITmedia ニュース t.co/LFrB4JvVZ8 確かにこれは面白い。センスある。大阪人はたかじんよりもこっちを話題にしたらどうか。
これ、厄介ですよ。書いてある事をしっかりと理解しないと行けないですし、考え方によっては相当エグイでしょうね。
「完全な『パクリ』レポート」を作成せよ──大阪市大の課題、その狙い 常識や先入観を逆手に - ITmedia ニュース t.co/5eIJrNpVjg
これは非常に難易度が高い。ソースの引っ張り方、引用個所の対応部分の見せ方、色々工夫しまくれる。(採点する方も大変だw) / “平成26年度大阪市立大学授業関係の連絡” t.co/89mPNxpcBm
難易度高すぎるぞ、このレポート・・・ / 他37コメント t.co/XC9E7QVylv “平成26年度大阪市立大学授業関係の連絡” t.co/GNIxu63LHd
これは面白そう しっかりと情報を読む力が
つく面白い課題だと思う <「完全な『パクリ』レポート」を作成せよ──大阪市大の課題、その狙い 常識や先入観を逆手に> t.co/XosR9xlwkn #niconews
ロジカルな文章を作れないと複数のそーすを繋げた文章で構成するのは難しい。良い課題だと思う。 / “「完全な『パクリ』レポート」を作成せよ──大阪市大の課題、その狙い 常識や先入観を逆手に - ITmedia ニュース” t.co/gLf7jKRftz
◆現在採点中という増田准教授。この課題の狙いって何だったの?
完全パクリレポート課題の採点の祭典に着手するが読み始めると面白くついつい時間が過ぎてしまう。明日早いので半分くらいで止めといたろ。今年のお題は佐村河内事件にしたが年々学生のコピペ文章術が着実に向上しているように思える。今年の課題内容:t.co/KgL76dVCyk
・「パクリ必須」のレポートを課題にしたきっかけは?
「メディアの変化が著作権制度の変化を生じさせた」「近年のインターネット環境の普及が著作権制度を揺るがしている」という議論をしているにも関わらず、レポート課題が旧来型の「紙とペンと資料」をベースにしたものであるのは居心地が悪い思いがあった。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000050-zdn_n-sci
「分からないことがあればググる」ことが日常化した昨今の学生にとっては、ネット環境とスマートフォンは、膨大なネット上の知識をある意味で自分の傍らに常に存在させているとも言えます。
出典:「完全な『パクリ』レポート」を作成せよ──大阪市大の課題、その狙い 常識や先入観を逆手に - ITmedia NEWS
コピペレポートが大学教師の間で問題になり始めたのは00年代の初頭ではないかと思いますが、メディア環境の変容が生み出した必然的な対応、という側面もあろうかと思います。であれば、それを前時代のメディアモラルに則って禁止するよりも、逆手にとってみる方が生産的ではないか、という意図がありました。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000050-zdn_n-sci
・引用元はどのようなメディアが多いのか?
もちろんインターネットからが多いですが、書物や雑誌、新聞も多いです。全体の比率でいえば7:3くらいの印象でしょうか。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000050-zdn_n-sci
個人のブログを参照していることも多いそうだが、TwitterなどのSNSはほとんどなかったようです。
「まとまった意見の中から一部を引用する」という先入観や発想が強い。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000050-zdn_n-sci
・数年間続けてきた中での変化や発見は?
年々洗練され、続けて読むとひとつながりの論旨をもった完成度の高いレポートとなっているものが増えてきている。
出典:「完全な『パクリ』レポート」を作成せよ──大阪市大の課題、その狙い 常識や先入観を逆手に - ITmedia NEWS
ネット検索のリテラシーが年々向上しているとともに、論文や書物のデジタル化、各大学の図書館データベースの充実など、検索できる学術的文章が増えていることも影響している。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000050-zdn_n-sci
毎年計100人ほどのレポートを見ていますが、同じ「パクリ」でも上手い下手は明確に出ます。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000050-zdn_n-sci
ネットで適切な文章を探してくる能力、適切に切り刻み配置する能力が高い学生は、主張する文章として完成度の高いレポートを作成しますし、一般にいう「文章力の高さ」とも相関しているようにも感じます。なぜなら、「パクリ」でよいレポートを作成してくる学生は、感想文もこなれている傾向があるからです。教師としてもそのあたりが面白く、「文章力」とは何か、ということを考えさせられます。
・学生の反応から見る課題の成果は?
自分でオリジナルな文章を書かせるレポートよりも、「他人の文章を10カ所以上探す」課題は、論じる対象についての先行する議論を学生が真面目に読む効果があったこと。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000050-zdn_n-sci
「パクリレポート」と同時に、作成した感想も提出させているのですが、「自分と違った意見がこれだけあることがわかった」という意見がほぼ必ず出てきます。自分の意見に合った環境を作ることが容易になり、他者の対立する意見を拒絶する傾向がある中で、好む好まざるに関わらず強制的に「他人の意見」を探させるのは、自分の意見のオリジナリティがどこにあるのか、をマッピングする効果を生んでいるように思います。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000050-zdn_n-sci
近年、卒論のコピペが問題となっている。
<a target="_blank" href="http://bylines.news.yahoo.co.jp/usuimafumi/20140322-00033799/">http://bylines.news.yahoo.co.jp/usuimafumi/20140322-00033799/</a>
・学生の感想はどうだったのか?
「文章を切り刻むことに罪悪感を覚えた」という言葉が散見されるのも興味深い。
出典:「完全な『パクリ』レポート」を作成せよ──大阪市大の課題、その狙い 常識や先入観を逆手に - ITmedia NEWS
「自分の文章で書けることは素晴らしい」「もうコピペはこりごりだ」「解放された」「2度としたくない」などの感想も多い
出典:「完全な『パクリ』レポート」を作成せよ──大阪市大の課題、その狙い 常識や先入観を逆手に - ITmedia NEWS
◆「オリジナルとは何なのか?」が問われる
我々が使っている「言葉」自体が、他人が生み出したものを模倣しているわけです。全く他人に依存しない自分独自の言葉で意見を述べて理解されることはありません。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000050-zdn_n-sci
では「オリジナルなもの」とは何か、辞書を見れば1文字ずつ全て載っている他人の言葉を組み合わせる「自分」とはどのような形で「オリジナル」なのか、そういった次数の高い問いにもつながると思っています。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000050-zdn_n-sci