◆ミイラの膝からボルトが発見された。
あるミイラの膝に、ボルトが埋まっていることが発見された。
ミイラは紀元前16~11世紀に死亡したとみられるエジプト人男性のもので、予想以上に進んでいた古代エジプトの医療技術に驚きの声が集まっている。
◆DNA検査をしている際に見つかったらしい。
エジプト人男性のミイラにつき、膝関節の内部にボルトが埋まっていることをブリガム・ヤング大学医学部の整形外科医、リチャード・ジャクソン博士が発見。
DNA検査のため、膝に小さな穴を開ける関節鏡検査をたまたま行った際に見つかったボルトは、長さ23cmほど。
◆現代の整形外科技術と同じ原理だった。
鉄製でねじれは緩いが、現代の整形外科でも多用されているボルト固定術と原理はまったく同じである。
また、骨への固定にはレジン(有機樹脂)が用いられていたという。
「膝関節の構造をよく知り、ネジ、フランジをどう用いたらよいのかを知っていたことや、そんな手術が3,000年以上前から行われていたことに驚きを隠せません」とジャクソン博士。
そしてこのミイラについて彼に検査を依頼した同大学の古代文明研究家、ウィルフレッド・グリッグス名誉教授は「古代エジプト人への畏敬の念がさらに深まります」と述べている。
◆古代エジプト文明は、高度な医療技術を持っていた。
古代エジプト文明と言えば、スフィンクスやピラミッドのイメージが強い
誰が? いつ? 何のために? そして、どんな方法で?謎につつまれた遺跡が多く存在するエジプト
紀元前3000年代、古代エジプト人が肉体と精神の病を化学的に治療する取り組みを始めた。
エジプト医学は時代を考えるときわめて発展しており、単純な非侵襲性の外科手術・接骨・広範な薬局方などが含まれていた。
古代エジプトでは医薬品の基準となる薬局方や診断システムが整っており、現代の医療とは基本的には変わらなかった。
プトレマイオス時代、コム・オンボ神殿碑文に描かれた古代エジプト医療器具
ナイル川沿いに建造されたKom-Ombo Temple、壁のレリーフに、ノコギリ、Probe、鉗子、ハサミ、外科用メスなど48の手術器具が描かれている。
古代エジプトの医療知識の評判は高く、他の王国の支配者はファラオに最高の医者を派遣して寵愛する者の処置に当たるよう要請することもあった。
2001年、4300年以上昔の王家の医師の墓から、青銅の手術器具が30点も見つかった。
世界最古の医療器具の発見だった。それらの器具の形は、現在の器具と似ている。
エジプト人は人体の解剖は全く行わなかったにもかかわらず、解剖学についての知識を持っていた。
例えば古代のミイラ製作のプロセスの中で、ミイラ技師は鼻孔から長い鉤上の器具を挿入し、頭蓋の薄い骨を破って脳を摘出する方法を知っていた。また体腔におさまった臓器の位置に関する大まかな知見もあったようで、左鼠蹊部の小さな切り込みから内臓を摘出している。
発掘されたミイラや骸骨から、エジプトの外科医がtrephination(頭部穿孔)という難しい手術を行っていたことが分かっている。
【医学書:エドウィン・スミス・パピルス】
負傷者の診断・手当についてなど、古代エジプト医学について書かれたエドウィン・スミス・パピルス
紀元前17世紀頃記述されたと考えられるが、記述されている医療知識はそれ以前1000年ほど前の間に培われたものと考えられている。
エドウィン・スミス・パピルス(Edwin Smith Papyrus)は、古代エジプトの外傷手術に関する書物(パピルス)。世界でも最初期の医学書で、人体解剖的研究、診断、治療、予後診断などが多数記されている。
頭蓋縫合、髄膜、脳外部表面、脳脊髄液、頭蓋内振動(intracranial pulsation)、心臓が血管と接合されていること、血管により空気が運ばれること、肝臓、脾臓、腎臓、尿管、膀胱などについての記述がある。
現存するパピルスによると、当時は900種近い処方がつくられていた。
出典:鹿児島市医報
【義足の技術】
古代エジプトのミイラがはめていた世界最古の義足。木と革でできた補綴用の靴先。切断手術を受けた患者の歩行補助に使われた。
ピラミッドなどの現場で働く場合、どうしても危険が伴った。落下してきた石につぶされて重症を負ってしまったら、手や足を切断することになったかもしれない。
イギリスで行われた実験により、これらの義足が単に外見を補うだけでなく実際に歩行を助ける実用的な義足だったことが証明され、世界最古の義肢であることが明らかになっています。
「今回の発見は、両方の義足が失った指の代わりに機能することができる、義肢と呼べるものだったと強く示唆します。この分野の医学は、エジプト人の足元から始まったのです」とFinch博士は語っています。
【自家歯牙移植】
自分の歯を抜き、自分自身の口の中の別の場所に移植する「自家歯牙移植」
出典:古代エジプトでも行われた歯の移植自分の親知らずをリサイクルする自家歯牙移植に注目 | 歯周病・歯の治療 | 健康 | ダイヤモンド・オンライン
「自家歯牙移植」は、自身の歯を今ある場所から抜いて他の場所へ移し変える処置
日本大学歯学部付属歯科病院口腔外科IIの本田雅彦氏は、「歯の移植は、古代エジプト時代にも行われていたという記述もあるほどです」と話す。
出典:古代エジプトでも行われた歯の移植自分の親知らずをリサイクルする自家歯牙移植に注目 | 歯周病・歯の治療 | 健康 | ダイヤモンド・オンライン
【衛生面での知識】
衛生も兼ねて青年への通過儀礼として「割礼」が行われていた。
割礼の歴史は古く、紀元前2300年前のエジプトの壁画に既に描かれていた。
健康を保つための医者のアドバイスとして、「身体を洗い、脇の下などを剃毛する」というものがあったが、これは感染症の予防になったと思われる。
また他にも食生活を見直し、非衛生的だと思われる生の魚や獣の肉を避けるように患者に勧めていた。
古代エジプトにおける衛生状態や医療に関しては、BC1900年頃建設の都市の遺跡からは排水溝が、BC1400年頃の遺跡からは浴室跡やトイレ用の椅子なども発見され、BC1000年頃からは、現在の病院に相当するサナトリウムも設けられていた。
出典:鹿児島市医報