◎国民的アニメやなせたかしさんの「アンパンマン」
大人から子供まで誰もが知っているアンパンマン。
アンパンマン
やなせたかしさんが描いた一連の絵本シリーズ、およびこれを原作とするアニメ。
◎「アンパンマン」の主題歌『アンパンマンのマーチ』
その主題歌『アンパンマンのマーチ』は「愛と勇気だけが友達さ」などの歌詞からなんだか寂しい歌のように解釈されがちです。
出典元:YouTube
◎?「アンパンマン」は愛と勇気だけが友達?
「ああアンパンマン 優しい君は 行け みんなの夢守るため」は、皆を守るために特攻隊となった優しい弟をアンパンマンに見立てているのではないだろうか?
◎「アンパンマン」の作者やなせたかしさんは戦争で弟を亡くす
特攻兵器回天の特別攻撃隊要員となったが、1945年(昭和20年)台湾とフィリピンの間のバシー海峡にて勤務していた駆逐艦「呉竹」が撃沈され、戦死。
呉竹 (駆逐艦)
日本海軍の駆逐艦。若竹型駆逐艦の2番艦である。
◎やなせさん自身も戦争を体験
21歳で召集され26歳まで軍隊で過ごした。終戦間際には、上海決戦に備え1000キロの行軍をした。
やなせたかしさん
『アンパンマン』の生みの親として知られる。
2013年8月に体調を崩して入院し、2013年10月13日午前3時8分、心不全のため東京都文京区の順天堂大学医学部附属順天堂医院で死去した。94歳。
上海で食料倹約の命令の下、薄いお粥だけで過ごした日々が、自分の顔を食べさせるという、国民的キャラクターを生み出した。
◎やなせさんの弟は「アンパンマン」のモデル?
弟は子供の頃、「コンパスで描いたような丸顔」だったとやなせさんは書いている。自分の顔を食べさせる「アンパンマン」の自己犠牲的なキャラクターに、亡き弟を重ねたのではないか
◎「愛と勇気だけが友達」とは、一人で恐れずに立ち向かうさま
「そうだ 恐れないでみんなの為に 愛と勇気だけが友達さ」は、愛と勇気だけを心に持ち、一人で恐れずに立ち向かうさまがありありと目に浮かんでくる。
◎戦争経験のやなせさん「戦争は絶対にしてはいけない」
「この社会で一番憎悪すべきものは戦争だ。絶対にしてはいけない」
「今の日本では飢えが身近にないので、実感がわきにくいかもしれない。だが、しばらく何も食べないでいれば、飢えのつらさは体験できる。本当に飢えているときには、どんな大金より、一切れのパン、一杯のスープのほうがずっとうれしい」
軍服姿のやなせたかし氏(右)
◎そんな思いから誕生した初代「アンパンマン」
初代「アンパンマン」は、1969年『PHP』に連載された童話『十二の真珠』の一話「アンパンマン」に登場した。
◎お腹をすかせた子どもにアンパンを配る
小太りの男がお腹をすかせた子どもにアンパンを配る話で、挿絵に描かれた主人公の姿はとてもかっこいいとは言えないが、お腹をすかせた子どもにとってはヒーローに違いない。
◎戦争で飢えに苦しむ子供達を助けるヒーロー
ある日アンパンマンは某国で長きに渡る戦争が続き、子供達に食料がいきわたっていないことを知る。
◎戦争を止められないのならば、せめて…
戦争を止められないのならば、せめていま苦しむ子供たちを助けるしかない。たくさんのアンパンを抱えて、アンパンマンは子供たちの元へと向かった。
空を飛んで駆けつけたアンパンマンは子供たちにアンパンを分け与えた。おいしそうにパンにむしゃぶりつく子供たちに、アンパンマンは告げる。 「私は何度でも、アンパンを運んでくるぞ」と。
◎アンパンマン、その後、絵本になるも難解さから酷評される
絵本のアンパンマンは当初、貧困に苦しむ人々を助けるという内容であり、未就学児には難解な内容で、編集部や批評家、幼稚園の先生などから酷評された。
◎しかし!次第に子供たちの間で人気!!
しかし、次第に子供たちの間で人気を集め、幼稚園や保育園などからの注文が殺到するようになった。読者の中心である子供たち(2・3歳児)に合わせ、アンパンマンの体型も初期作品の8頭身から3頭身へと変わっていった。
◎やなせさん「正義のための戦いなんてない」
「正義に勝ち負けなんて関係ない。困っている人のために愛と勇気をふるって、ただ手をさしのべるということなのだ」
「ぼくが『アンパンマン』の中で描こうとしたのは、分け与えることで飢えはなくせるということと、嫌な相手とでも一緒に暮らすことはできるということです」
もしもう一度アンパンマンのマーチを聴く機会があったら、やなせたかしさんがどんな想いで作詞をしたのか考えながら聴いてみてはどうだろうか。きっと新しい感動がそこから生まれるはずだ。
ぼくは戦争は大きらい 著/やなせたかし
嫌いな戦争のことはあまり語りたくないと考えていたやなせが、90歳を超え、戦争体験、軍隊体験を語り継ぐことで、過去の戦争のことが未来を生きる世代の記憶に少しでも残ればいい、と亡くなる直前まで語ったラストメッセージ。
◎世の中が平和ならば、愛と勇気だけが友達なんてことはない!
その強い平和への思いは、数々の人気キャラクターたちとともに、多くの人に受け継がれていくことだろう。